会計×AIの可能性① -不正会計をAIでなくすことはできるか

 

こんにちは。とむるです。

私は現在、文系大学院で会計を専攻しているものとして、AI×会計において強い関心を持っています。

AI×会計分野の中で特に実務で期待されているのが、AIで不正会計を発見する「AI×監査」分野です。

ちなみに会計や監査に対していわゆるAIの機械学習やビットコインのブロックチェーンなどのITにおける先端技術を応用した場合は、IT先端技術を金融サービスへの応用したソリューションの名称であるFinTechになぞらえて、AccounTech(会計×IT)、AudiTech(監査×IT)と呼ばれます。

ちなみにこの記事は、不正会計はAIで見抜けるかを参考にしています。

会計現場へのAI活用

今回は、会計現場の中でも特に不正会計を検出するうえで必要不可欠な監査におけるAI活用の可能性を考えたいと思います。

不正会計はAIで見抜けるかによると監査における不正会計の検出のアプローチには、2つのアプローチがあります。

1つ目のアプローチとして、「公開情報を用いて不正会計の予測モデルを構築するアプローチ」になります。

ここでいう公開情報とは、有価証券報告書を含んだ財務諸表の会計情報のみならず、株価などの証券情報も含まれます。

このアプローチは、『マクロレベル』のアプローチと呼ばれています。

このアプローチでは、不正会計のパターンを識別するアルゴリズム、つまり不正会計予測モデルの推計する場面においてAIが活用されます。

2つ目のアプローチとして、「非公開情報を用いて不正会計の予測モデルを構築するアプローチ」になります。

ここでいう非公開情報とは、非上場企業の情報の意味ではなく、被監査企業の内部情報1社の情報になります。

このアプローチは、『ミクロレベル』のアプローチと呼ばれています。

このアプローチでは、非公表の詳細な内部情報データを活用して、不正な取引や仕訳を見つけていく場面でAIが活用されます。

以下では、マクロレベルとミクロレベルのアプローチをより詳細に紹介していきます。

マクロレベルのアプローチ

マクロレベルのアプローチでは、不正会計を行っている企業の財務諸表や株価情報などの公開情報を一定の傾向やパターンを機械的に識別し、その類似性に着目するようです。

どのくらい類似するのかという視点で不正会計の発生リスクを算出します。

不正会計予測モデルを構築するときに着目すべきは、「不正会計の発生する要因として、どのようなインプット要素に注目するか」です。

ミクロレベルのアプローチ

ミクロレベルのアプローチは、企業内部の企業情報を活用して不正を検出します。

例えば、売上高のような勘定科目に対して機械学習を利用し、月次・日次ベースの勘定科目の動きを予測します。

期待値と実際の勘定科目の動きが大きく異なる場合には不正や誤謬が疑われます。

また機械学習を活用して、仕訳の異常検知を行う手法もミクロレベルのアプローチとして既に取り組まれています。

現状の監査現場では、仕訳テストがおこなれていますが、その仕訳の数は膨大で監査人はすべて検証することはできません。こうしたこともあり機械学習を使った監査には期待が寄せられています。

ただ現実的に異常が疑われる異常仕訳の抽出条件は、決まっているわけではないため、より良い(精度の高い)抽出方法が試行錯誤されているようです。

会計データへの異常検知の手法

機械学習を活用した会計データへの異常検知では、データの構造を把握に基づいて、異常度の定義を行い、その異常度が、機械学習のアルゴリズムの閾値を超えるかどうかによって異常かを判断することになります。

こうした機械学習による異常検知を採用することで、従来会計士が設定していた異常検知の定義や抽出ルールを自動的に決定することができるようになります。

データの構造を把握するためのアルゴリズムには、①統計的分布に基づく手法、②距離に基づく手法、③密度に基づく手法が良く用いられているようです。

統計的分布に基づく手法

統計的分布に基づく手法には、「ホテリング理論」があります。ホテリング理論は、与えれたデータに基づいて標本平均と標準偏差を計算し、観測値と標本平均のかい離を標準偏差で割った「マハラノビス距離」の2乗を異常度とするものです。

距離に基づく手法

距離に基づく手法は、分布が不規則で多数の類型が考えられる仕訳に当てはまる可能性が高く、「k近傍法」が知られています。

k近傍法は、観測値からk番名に近いデータまでの距離により異常度を測定する方法になります。外れ値はほかのデータからかい離していることからk番目に近いデータとの距離が離れているものを異常とします。

密度に基づく手法

密度に基づく手法は、会計データの密度が一様ではない場合に用いられている手法になります。

密度に基づく手法として「局所外れ値因子法(LOF法)」が使われているようです。

局所外れ値因子法(LOF法)は、観測値からの最も近いデータ(最近傍点)までの距離と、最近傍点から最も近いデータまでの距離の比を見ることで、密度が近傍と比較して、低くなるような点を異常と定義する方法になります。

AI×会計の可能性

これまで人の手によって行われてきた会計実務の不正検知にAIを取り入れることで自動化によりこれまで会計士などの人が想定していなかったパターンの不正が発見できる可能性があります。

一方でAI技術に依存しすぎるとアルゴリズムが複雑になって、インプット要素に基づく結果の解釈が困難になり、なぜ不正会計の猜疑が高いのかが具体的に証拠に基づいて判断し、説明することが難しくなります。

よって、これまで培われた監査業務における知見との組み合わせて不正を発見することが重要になってきます。

参考文献

不正会計はAIで見抜けるか

・FinTech×監査の現状:AIで見抜く不正会計(2017) 『企業会計』第69巻第6号, pp.55-63