仮想通貨に対する会計的考察① -仮想通貨はこれまでの会計処理で対処できるか?

こんにちは。とむるです。

私は今「仮想通貨」の投資にはまっています(かなり)。様々な仮想通貨が値上がりが続いていますね。2018年もこの傾向が続くのでしょうか。

こうした事態から仮想通貨の投資方法などを解説したいいサイトはたくさんありますが、仮想通貨の具体的な定義や会計処理、税務上の扱いなどはまだまだ少ないように思います。

一方でついに平成29年12月6日に企業会計基準委員会(ASBJ)によって実務対応報告公開草案第53号における『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)』が公開されました。

そこで大学院で会計を専攻している私が、主に会計的視点を交えながら仮想通貨について分析していきたいと思います。

主な想定読者は、仮想通貨がどういったものか知りたい方や会計関係のバックグラウンドを持っている方、今後ビットコインなどの仮想通貨を投資しようとしているがしっかりと投資対象を知りたい方を想定としています。

仮想通貨とは何か? まずは仮想通貨の定義のおさらい

仮想通貨というとビットコインが最も有名ですが、そもそも仮想通貨とはどういうものでしょうか。

仮想通貨は「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律(平成28年法律第62号)に基づいて改正が行われ、平成29年4月1日に施行された「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号)の「第三章の二 仮想通貨」、いわゆる「仮想通貨法 」によって以下のように定義されています。

資金決済に関する法律 第二条 5
この法律において「仮想通貨」とは、次に掲げるものをいう。
一 物品を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨並びに通貨建資産を除く。次号において同じ。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの

二 不特定の者を相手方として前号に掲げるものと相互に交換を行うことができる財産的価値であって、電子情報処理組織を用いて移することができるもの

上記の「財産的価値」という言い回しが微妙なところですが、仮想通貨は、法定通貨としてみなされていません。あくまで「支払手段」の1つという取り扱いです。日本の法定通貨は「通貨の単位及び貨幣の発行などに関する法律」(昭和62年法律第 42号)によって規定されており、「通貨とは貨幣(鋳造貨)と日本銀行券をいう」(2条3項)と規定されています。

ただし仮想通貨は、電子マネーに含まれていません。電子マネーは「通貨建資産」として第二条の 5 の 1 で定義されています。

法律・政令等の施行日は、 2017 年 4 月 1 日となっています。仮想通貨の代表格であるビットコインが誕生したのが2009年のことですから、対応は後手に回っているような気もしますが世界的にみると日本のようにきちんと整備された法律はまだほとんどないです。

また資金決済法は、仮想通貨を取り扱う「仮想通貨交換業者」についても規定を行っています。

仮想通貨交換業者は、「第2条第8項」において規定が行われており、「第63条」に則り、その業務登録を金融庁・財務局に義務付けられています。

また仮想通貨を利用する企業のうち、仮想通貨交換業者以外の者を「仮想通貨利用者」という言い方をしています。今後仮想通貨を事業や投資などに利用していくであろう企業などを指しています。

仮想通貨の取り扱い

以下では、ASBJが公表した実務対応報告公開草案第53号における『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)』に基づいて仮想通貨の取り扱いについて考えていきたいと思います。まずは仮想通貨の性格の検討からです。

仮想通貨は資産か?

仮想通貨は「資産」として計上されることが考えられます。ただし資産項目のどの勘定を用いることが問題となります。

余談ですが、私は大学院の研究で資産を金融資産(財務資産)と非金融資産(非財務資産)に分解し、財務諸表分析に活用するという会計研究(これによりRNOAを求め、アドバンスト・デュポン・システムといいます)を主に扱っています。

この研究の関連でTOPIX100の企業の資産項目を調べあげ、手作業で資産を2分割しましたが、当然ながら大手企業でも現状「仮想通貨」という項目はありません。

仮想通貨は外国通貨か

では、仮想通貨は会計処理として「現金・預金」の勘定項目に計上されるのかが問題になります。ちなみにASBJは仮想通貨は、本邦通貨ベースからして価格変動が起こり、且つ決済手段としての保有・利用が想定されることから「外国通貨として会計処理すること」(p.8)を候補として挙げています。ただし、

しかし仮想通貨は、現状「現金・預金」の勘定項目には当てはまらないとしています。その理由を、

「一般的に法定通貨であることが想定されていること、当該外国通貨ベースでみれば法定通貨の単位での価値の変動がなく仮想通貨と必ずしも類似の性格とは言えないことから仮想通貨を外国通貨として計上することは適切でない」

としています。

政府の見解としても参議院 ビットコインに関する質問 答弁書

・有価証券その他の収益の配当等を受ける権利を対象としている金融商品取引法(昭和二十三年法律第二十五号)第二条第一項又は第二項に規定する有価証券等の取引には該当しない。

と公表しており、仮想通貨は「本邦通貨」や「外国通貨(円・ユーロなど)」に加えて「有価証券」にも該当しないことが明記されています。

仮想通貨は金融資産か

また仮想通貨が利用者によって投資目的で保有され、有価証券等の金融資産に類似した性格を有することからASBJは、「金融資産として会計処理すること」(p.8)を候補としています。

ただし、会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」第4項では、金融資産を

「現金、他の企業から現金若しくはその他の金融資産を受け取る契約上の権利、潜在的に有利な条件で他の企業とこれらの金融資産若しくは金融負債を交換する契約上の権利、又は他の企業の株式その他の出資証券である。」

と定義し、また国際的な会計基準においても「一方の企業にとっての金融資産と、他の企業にとっての金融負債又は資本性金融商品の双方を生じさせる契約」と考えられていることを理由として仮想通貨を金融資産には該当しないとしています。

仮想通貨は棚卸資産か

ASBJは、仮想通貨は利用者によって投資目的で保有され、現物商品(コモディティ)である金地金に類似する性格を持つことから「トレーディング目的で保有する棚卸資産として会計処理すること」(p.8)を候補としています。

ただし、企業会計基準第 9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」によると、棚卸資産は通常の販売目的で保有する場合、トレーディング目的で保有する場合いづれの場合においても

「営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産」

と定義される一方、仮想通貨は決済手段として利用されるなど棚卸資産とは異なる目的で利用されるために、仮想通貨が棚卸資産の定義には該当しないとしています。

仮想通貨は無形固定資か

またASBJは仮想通貨について、資金決済法において電子情報処理組織を用いて移転することが可能な財産的価値とされており、無形の価値を有すると考えれることから、「無形固定資産として会計処理すること」(p.8)を候補としています。

ただし日本基準、国際的会計基準を含め、「一般的にトレーディング目的で保有される無形固定資産という分類は想定されていないこと」(p.8)を理由に仮想通貨を無形固定資産として会計処理することは適当ではないとしています。

結局仮想通貨はどういう性格を持つのか

上記で仮想通貨の取り扱いをみてきましたが、実務対応報告公開草案第53号における『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)』だと現状では仮想通貨は資産の性格を有するものの、これまでの会計基準には当てはまらない資産として結論付けています。

したがって新たに仮想通貨を定義する会計基準の作成を目指しているとしています

ですから今後、仮想通貨の会計基準の詳細を詰めていく中であたらめて仮想通貨の性格が議論されていくと思いますが、「仮想通貨」という今までになかった勘定項目が生まれる可能性が高いです。

また現状では、日本基準のみが仮想通貨の会計処理を公表していますが、IFRSや米国基準も現在検討中の段階のようですから米国やヨーロッパなどで仮想通貨に関する法律が生まれる前後で会計基準が公表されていくと思います。

以上、まずは仮想通貨の性格を会計的な視点でみてきました。この記事は、会計基準の進展があり次第、順次更新していく予定です。

次回は仮想通貨の評価について考察していきたいと思います。

ちなみに参考文献は以下になります。

参考文献
・Boon Seng Tan and Kin Yew Low (2017) “Bitcoin–Its Economics for Financial Reporting,” Australian Accounting Review, Vol. 27, No. 81, pp. 220–227.

・Asheer Ram, Warren Maroun, and Robert Garnett (2016) “Accounting for the Bitcoin: accountability,neoliberalismandacorrespondenceanalysis,” MeditariAccountancyResearch, Vol. 24, No. 1, pp. 2–35.

参議院 ビットコインに関する質問 答弁書

実務対応報告公開草案第53号における『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)』

・岡田仁志・高橋郁夫・山崎重一郎 (2015) 『仮想通貨―技術・法律・制度』,東洋経済新報社.

ちなみに上記2つの論文は、まだ数少ない仮想通貨(ビットコイン)の会計処理について論じた論文になります。前者は従来の会計処理でビットコインは処理することができると論じています。

後者はビットコインの技術的な背景も含めて論じています。こちらの論文についても機会があれば、取り扱ってみたいと思います。

一番最後の書籍は、下記から購入できます。仮想通貨を規定する提言などがまとまっていてとても参考になりました。

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