ICOの会計処理 -仮想通貨のビジネスモデルの会計処理とは?

こんにちは。とむるです。

私は、現在文系大学院に所属し、「仮想通貨の会計処理やICOの会計処理」を勉強・研究に取り組んでいます。その過程でいくつかのICOにも投資(投機?)させていただいています。

今回紹介させていただくのは、まさにICOの会計処理の話です。

現在ICOの会計処理を検討することが非常に難航しているというのが日本経済新聞の2018年1月17日付の記事で紹介されています。

ICO実施企業、つまり被監査企業は、決済代行サービスなどを手掛けている株式会社メタップスで、メタップスを監査を担当するのはいわゆるBIG4の一角をなすPwCあらた監査法人です。

メタップスは昨年、韓国子会社を通じてICOで仮想通貨イーサリアムを当時のレート換算で約10億円調達したそうです。

そのICOの会計処理を巡り、会計処理を巡り監査法人との協議が難航。深夜に決算を発表する異例の事態となりました。

この事態の原因は、ICOについては法律上の位置づけが明確でなく、会計ルールの策定がされていないことにあります。

昨年の12月に日本企業の会計基準を策定する企業会計基準委員会(ASBJ)が議論を重ね、昨年12月に公開草案を出したものの、ICOに関する会計ルールはまったく定めておらず、会計処理は個々の企業や監査法人に任されているのが実情になります。

日本経済新聞の記事にもありましたが、最近何かと騒がれる監査法人は、訴訟リスクをとにかく避けたいと考えています。そのためICOといったルールが策定されていない案件には、関わりたくないというのが本音だと思います。

さらに中国や韓国、イスラム圏の一部などでICOが禁止されるなど世界中で規制の動きが広がっていることもあり、監査対象企業にICOを実施しないように求めている動きもあるようです。

私自身、ICOに関わっていることもあり、日本にも規制や禁止の動きが出るのを防ぐためにもICOとは何か、現状、考えられているICOの会計処理をまとめたいと思います。

前置きがとても長くなりましたが、以下本編になります。

ICOの定義の確認 ICOとは何か

そもそもICOとは、何でしょうか。なんとなく用語を使っているけど、そこの定義が非常に重要です。

ICOとは、「一般的に資金調達主体である発行体が価値を持たせることを目的としたデジタル記録であるトークンは発行・売却し、投資家からビットコイン(BTC)やイーサリアム(ETH)などの主流通貨による払い込みを受けることで資金調達を行う一連の取引」を指します。

ICOにおけるトークンとは、デジタル上に記録された価値で、ICOの実施に伴って個別機能を付加することで、価値を増大させることを目的としています。

トークンの役割は様々で、決済手段として用いられることもあれば、ICO実施体が提供する個別の機能が付与される場合もあります。

ICOで発行されたトークンは、発行体によって香港のBinance、米国のBittrexといったトークンの仮想通貨取引所の取扱銘柄として選定される(上場する)ことを目指します。

自社のトークンが上場することによって、より多くの投資家に自社のビジネスモデルを知ってもらえる可能性があることと上昇したことによるトークンの値上がり益によってトークンの投資家に報いることを目的とします。

またICOの投資家は、上場後のトークンの値上がり益を目的とした投機目的や将来的なビジネスの発展に期待した購入を行います。また取得したトークンを中心として形成されるいわゆる「トークン・エコノミー」への参加を目的としてトークンを購入する場合もあります。

よって発行体、投資家双方にとってトークンの上場はICOにおける重要なプロセスの1つだと言えます。

ICOは、ICOを実施して資金調達を計画する発行体が、ホワイトペーパー(ICOの概要を述べた説明資料)を発行し、投資家に対して情報をすることから始まります。

ホワイトペーパーの内容は、一般的にICOのスケジュール、ICOで実施するプロジェクトの具体的な内容、資金調達予定金額、資金使途、発行するトークンの機能、使用する技術的説明、ロードマップが記載されます。

しかし、上記で述べたホワイトペーパーの内容は義務付けられているわけではなく、外部専門家のレビューや監査といった記載内容を担保する仕組みがないため、まったくの虚偽内容の可能性もあります。

つまり投資家は、担保の仕組みがないことを理解したうえでICOへの投資決定を行う必要があります。

 

ICOの会計処理はどうなる?

現状、日本においてICOを規定した会計処理はありません。というか世界中の国々においてもまだ策定はされていません。

2017年12月にASBJが公表した実務対応報告公開草案第53号における『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)』では、仮想通貨に関する会計処理の取扱いが始まったものの、ICOにおいては、法整備自体が不十分であることなどを理由に公開草案には含まれませんでした。

そのため現状としては、ICOの会計処理は個々の企業や監査法人に任されています。

メタップスの場合は、(開示事項の経過)当社連結子会社の ICO に伴う会計処理についてにおいて公表していますが、 ICOで得た資金を貸借対照表上の非流動資産項目の無形資産」及び流動負債項目の「預り金として取得時価格で計上していました。

2017 年 11 月 13 日公表の「当社海外子会社による ICO 及び仮想通貨取引所の設立に関するお知らせ」にてお知らせのとおり、当社連結子会社である Metaps Plus は 2017 年9月 26 日から 2017 年 10 月 10 日を販売期間として Initial Coin Offering を実施いたしました。本ICO は、仮想通貨取引所“CoinRoom”における流動性提供及び今後のサービス拡大に備えた原資確保を目的とし、仮に所定の期日までに“CoinRoom”が設立されなかった場合、本 ICOにおいて調達された仮想通貨は ICO 参加者の希望に応じて返還される条項が付与されておりました。その性質上、“CoinRoom”の設立までの会計処理として、非流動資産(無形資産)及び流動負債(預り金)に計上いたしました。

またICOの対価は、将来的には収益として認識するようですが、本四半期においては、前受金として負債項目の中に含めるようです。

本 ICO は、仮想通貨 Pluscoin(PLC)の販売であり、本 ICO において受領した対価は将来的には収益として認識いたします。但し、収益認識の方法やタイミングについては引き続き協議中ですが、本四半期においては、受領した対価の全額を負債(前受金)として計上するのが妥当であると判断しております。

とりあえず現状実在する項目で対応したものの、日本経済新聞のコメント曰く、「どの勘定科目に計上するかを含め、見当がつかない」(公認会計士)との声もあるそうで、現場は悲鳴を上げています。正直関わりたくないというのが本音でしょう。

またメタップスのケースでは、 ICOで得た資金を取得価格で計上しましたが、貸借対照表時に計上するときの価格をどう評価するのかに焦点が当てられています。

またICOでは、流動性の高い代表通貨であるビットコインやイーサリアムなどを発行体のをウォレットに振り込む形で資金を調達しますが、振り込まれた仮想通貨の値上がり益や値下がり損をいつ認識し、計上するのかも大きな問題となっています。

メタップスの仕訳のまとめについては、twitter上で、大手町のランダムウォーカーさんのツイート画像がとてもまとめられていると感じました。引用させていただきます。ありがとうございます。

トークンの評価

さらにICOの付帯物であるトークンもホワイトペーパーに記載された内容によってトークンの性質が変わってくることから、トークンそのものがホワイトペーパーの内容を反映したうえで金融商品に値するのか、はたまた非金融商品になるのかかが問題です。

金融商品や非金融商品と一口で言っても様々な性格を持つ資産になり得ますからね。これは評価が大変です。

前述したとおり、トークンは、ホワイトペーパーの内容によって性格が変わってくることからトークンが仮想通貨やプリペイドに該当する場合は、いわゆる改正資金決済方、トークンが有価証券等に該当する場合は金融商品取引法、または特定商取引法の規制を受けるものであることを考慮する必要があります。

日本の会計基準では、トークンは、株主による払い込みではないため、トークン発行体の株主資本に該当する可能性は低いと思われています。

トークンが棚卸資産や無形資産に該当する場合には、トークン発行体の損益計算書(PL)には「売上」が計上され、トークンが金融負債に該当する場合には、貸借対照表に「負債」が計上する可能性があります。

さらに国際会計基準(IFRS)では、トークンがもし「持分金融商品」と判断されれば、なんとトークン発行体の株主資本になる可能性がありますから話は大変ややこしいです。

投資家(ICOの参加者)の評価

今後、日本においてもICOに参加し、トークンを購入する企業や監査を受ける組織が出てくるかもしれません。

その場合の評価のトークンの評価項目がどのようになるのか難しい問題になります。

トークンは、取得原価でどのように資産として報告するべきなのか(該当項目の可能性としては、有価証券、債券、棚卸資産、無形資産などが挙げられます)、もしくは仮想通貨の会計処理に組み入れ、仮想通貨の項目で一括計上をするべきなのか、いづれにせよICOをさらに資金調達手段として普及するには、会計基準の背景にある法整備を進めていく必要があります。

ただし、法整備によって登録の義務付けや監査といった投資家の保護への義務などが生まれ、現状のように柔軟な資金調達はできなくなるかもしれないというジレンマもあります。

ICOは現在、世界中で禁止の動きを見せていますが、どのように法律を整え、認識し、評価していくか世界レベルで議論を深めていく必要があるかもしれませんね。

以上、大変長い文章となりましたが、読んでいただきありがとうございました。

参考文献
・鈴木智香子・檜垣寛・和田山孝洋 (2017) 『企業会計』第69巻第12号, pp.107-116
実務対応報告公開草案第53号における『資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)』
・日本経済新聞2018年1月17日朝刊「ICOの会計処理 難航 メタップスの決算深夜発表 監査法人が慎重姿勢」