アノマリー(Anomaly)とは何か -効率的市場仮説に対する反証

こんにちは。とむるです。

今回の記事では投資の分野でよく聞くアノマリーについて解説したいと思います。

アノマリーとは何か

アノマリー(Anomaly)とは、効率的市場仮説では説明することができないけれど、特定の手法によって期待リターンが高くなる現象のことを指します。

アノマリーについて理解するにはまずは効率的市場仮説についてしっかりおさえておきましょう。

効率的市場仮説とは?

効率的市場仮説(efficient market hypothesis:EMH)は、市場における証券価格が入手可能な全ての情報を常に完全に反映していることを主張している仮説のこと(Fama[1970], p.383など)です。シカゴ大学の教授であるファーマという人が中心となってこの仮説を主張しました。

効率的というのは、現在利用することができる情報が株価などの証券価格にはすでに適正な形で織り込まれてるという意味を表しています。

理論的には、情報の流通コストがゼロ(情報が瞬時に伝わること)、取引コストがゼロ、大勢の投資家がいて彼らが合理的に活動することで市場は効率的になると考えられています。

市場が効率的で公表された情報が瞬時かつ完全に証券価格に反映されるなら、その証券を取引するのに負担したリスクに見合う正常リターンまたは期待リターンを得ることができてもそれを上回る異常リターンまたは超過リターンを得ることはできません

また市場の効率性は、ウィーク型(weak form)、セミストロング型(semi strong form)、ストロング型(strong form)の3つの段階に分けられています。

ウィーク型(weak form)

ウィーク型は、「市場における現在の証券価格には、過去の全ての情報が反映されている」と考える仮説になります。ウィーク型が成立すれば過去の証券価格から将来の証券価格を予想して儲けることは不可能ということが言えます。つまりテクニカル分析は成立しないということになります。

というのも過去の証券価格の動きは全ての人が手に入れることができ、同じことができるので市場が効率的であれば儲けることができないからです。

セミストロング型(semi strong form)

セミストロング型では、「市場における現在の証券価格には、過去の全ての情報と現時点で公表されている全ての情報が反映されている」と考える仮説になります。つまりセミストロング型が成立していれば、今度はファンダメンタル分析は意味がないものということになります。

こちらも証券アナリストなどの市場関係者の数は非常に多く、企業が公開する情報は即座に株価に反映されると考えられるからです。現在は市場関係者の多くが現実の市場(マーケット)はセミストロング型であると考えています。

ストロング型(Strong form)

ストロング型は、「市場における現在の証券価格は公表の有無に関わらず全ての情報が反映されている」と考える仮説になります。ストロング型が成立するとすればインサイダー情報すらも証券価格に反映されていて成立しないということになります。流石にストロング型を否定する人は多く、実証分析においても否定的な結果が出ています。

ただし証券市場は常に均衡状態にあるとは限りません。何らかの原因をもって証券価格が効率的にならず形成されるかもしれません。そういった場合には裁定取引(arbitrage)(Friedman[1953])のメカニズムが働き、証券価格を是正する力が働きます。

裁定取引(arbitrage)とは

裁定取引とは、ある証券価格などの価格差を利用して売買を行い利ざやを稼ぐ取引のことを言います。もう少し具体的に説明しましょう。

投資家にとって過少に評価され価格形成が行われた証券を発見した場合には、当然その銘柄を購入することが合理的です。一方で過大に価格形成が行われた証券を発見した場合にはその銘柄を売却(現物売りまたは空売り)することが合理的な行動になります。

過少に評価された証券を購入した投資家はその銘柄とリスクが同じ別の証券を反対に売却し、逆に過大に評価された証券を売却した場合にはリスクが同じ別の証券を反対に購入します。こうした反対売買を同時に行うことで裁定取引を行う投資家はリスクを全く取らずに利益を得ることができます。こんなリスクを全く取ることなく儲けることができれば誰でもやりますよね? なので残念ながら裁定取引はすぐに成立しないようになってしまいます。

こうした合理的な投資家による裁定取引が迅速かつ十分に行われる限り、たとえ証券価格が一時的に効率的でなくなったとしても瞬時に是正され市場の効率性が回復・維持されるはずです。

しかし一方でこうした成立するはずの証券市場の効率性を支持しない結果が研究を通して明らかになってきています。前置きが長くなりましたが、これがアノマリーと呼ばれる現象になります。

アノマリーは多数報告されている

効率的市場仮説を否定するアノマリーは現在では多数報告されています。たとえばその他の月に比べて1月のリターンが高いことを示した1月効果(Rozeff and kinney[1976])、時価総額の大きな大型株よりも小型株のリターンが高いことを示した規模効果(Banz[1981])、過去6ヵ月という短期間の株価パフォーマンスに焦点を当てると、パフォーマンスの傾向がその後3ヶ月・1年という期間にわたり継続することを示したモメンタム効果(Jegadeesh and Titman[1983])などがあります。

興味深いのは、効率的市場仮説を主張していたファーマもシカゴ大学の同僚であったフレンチと一緒となってデータ分析を集めてその分析結果からアノマリーの存在を認めることになりました。

彼らはアノマリーの存在を含めての株式の期待リターン水準を決定する要因を定めたモデルをファーマ=フレンチの3ファクターモデルとして発表しました。これは金融業界ではとても有名なモデルになります。

このモデルは、CAPMの拡張版としても知られていて株式の期待リターンは、1.CAPMが予測する市場ポートフォリオのリスクプレミアムから生まれる、2.小型株効果、3.割安株効果という3つからもたらされるとしました。2と3がアノマリーです。

これによって例えばバリュー株の投資家やグロース株の投資家が好成績をあげていることが一応説明できるようになりました。

さらにこうしたアノマリーは、行動ファイナンスによって市場平均を上回る期待リターンが上げられるのか説明することができます。例えばバリュー株は、現在成長性や何らかのリスクによって投資家にとって魅力的でないと判断されている企業の株式になります。

バリュー株は、「合理的に妥当だと考えられる以上に安くなりやすい」と言われています。それは一度ダメだという評価を持ってしまうと人の心理はなかなか変わらず、多少の業績が良くなったからといって評価が上がることが難しいです。

逆に優良株は、合理的に妥当だと思われる以上に買われるようになります。優良という企業イメージが定着すると多少のことでは評判は落ちず、安心して買うことができるからです。

またモメンタム効果が起きる原因は、バンドワゴン効果によって説明できます。バンドワゴン効果とはある金融商品などに対して、お大勢の人がその商品を支持している場合に、その商品の支持がさらに大きくなるという現象です。いわゆる勝ち馬に乗るという心理状態のことになります。

バンドワゴン効果によって上昇している株価は、株価が上がっているというニュースを聞いた人々が飛び乗ることによってさらに上昇することになります。

以上、アノマリーとは何かを解説してきました。参考になれば幸いです。

参考文献

参考書籍

 参考論文

・Malkiel, B. G., & Fama, E. F. (1970). Efficient capital markets: A review of theory and empirical work. The journal of Finance25(2), 383-417.

・Rozeff, M. S., & Kinney Jr, W. R. (1976). Capital market seasonality: The case of stock returns. Journal of financial economics3(4), 379-402.

・Banz, R. W. (1981). The relationship between return and market value of common stocks. Journal of financial economics9(1), 3-18.

・Jegadeesh, N., & Titman, S. (1995). Overreaction, delayed reaction, and contrarian profits. The Review of Financial Studies8(4), 973-993.

・Fama, E. F., & French, K. R. (1992). The cross‐section of expected stock returns. the Journal of Finance47(2), 427-465.

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